「人を動かすナラティブ」(著:大治朋子)

  • 大交代理論の「核」をなすのは、1)自分たちの国は白人のものである、2)劣った人種が多数押し寄せ、優秀な白人は少数派に転落しそうである、3)国家的な脅威、危機であるーーーといった被害者意識だ。
  • ウクライナによる影響工作の勝因10
  1. 偽情報は修正するのではなく、あらかじめ暴露する
  2. ヒロイズムに訴える
  3. 都合の良い情報を取捨選択して出す
  4. 殉職者を神話化する
  5. 市民とともにあると訴える
  6. 市民の犠牲を強調する
  7. 市民の抵抗を最大化する
  8. 周囲の参戦を促す
  9. 自らの人間的側面を示す
  10. ユーモアを駆使する

 

  • ナラティブ思考は事実に基づいた思考というより、自由な物語の想像を許す思考です。人でないものを人に見立てたり、擬人的な思考や、事実を否定した半事実的な思考も含まれてきます。したがって、論理思考が一つの事実理解に収束する思考であるとするのに対し、ナラティブ思考は発散的思考とも呼ばれます。
  • 三つ目の伝承系ナラティブの形式は「伝説」だ。偉業を遂げた実在の人物や組織の伝説は心を打たれる。ただ、リアルと見せかけて実際は虚飾、脚色だらけの伝説もあるというから用心が必要だ。
     ダニエル・カーネマン氏は、企業伝説がいかに信用ならないかを指摘している。
    「企業の成功あるいは失敗の物語が読者の心を捉えて離さないのは、脳が欲しているものを与えてくれるからだ。それは、勝利にも敗北にも明らかな原因がありますよ、運だの必然的な平均回帰だのは無視してかまいませんよ、というメッセージである。こうした物語は『分かったような気になる』錯覚を誘発し、あっという間に価値のなくなる教訓を読者に垂れる。そして読者の方は、みなそれを信じたがっているのである」
    「矛盾や不一致がなく頭にすらすら入ってくるストーリーは受け入れやすい。だが認知が容易でつじつまが合っているからといって、真実だという保証にはならない。(脳内の)連想マシンは疑いを押さえつけるようにできており、いちばんもっともらしく見えるストーリーにうまくはまる考えや情報だけを呼び出す仕組みになっている」
  • 紛争ナラティブ(ダニエル・バルタル教授)
  1. 自己正当化:この戦いは自分たちにとって存在をかけた崇高なものだが、敵側が戦いを続ける合理的な理由は無い。
  2. 脅威の強調:この戦いは自分たちの生命、価値観、アイデンティティ、領土を脅かすものである
  3. 敵の非人間化、悪魔化:敵は人間ではなく悪魔や動物、ウイルス、ガンである。また相手の攻撃は野蛮であり合理性、人間性に欠ける
  4. 自集団の美化:自分たちは人間的で道徳的である
  5. 自集団の被害者化:過去に受けた傷も含め、常に被害者は自分たちである
  6. 愛国心の強調:勝利には犠牲が伴う