アダム・スミス共感の経済学(ジェシー・ノーマン)

「”すべては自分のために、何一つ他人には与えない”というのが、どの国どの時代にも支配者に共通する浅ましい考え方のようだ」(国富論 第三編第四章)

 

「本来知恵と徳だけに捧げられるべき尊敬と讃美が富と権力に注がれ、悪徳と愚行にもに向けられるべき軽蔑が多くは不当にも貧困と無力に浴びせられるのである。どの時代の哲学者もこのことを嘆いていた」(道徳感情論 第一部第三編第三章)

 

「たいして役に立たないつまらないものに無駄金を投じ、財産を減らす人がどれほど大勢いることだろう」(道徳感情論 第四部第二章)

 

出世に邁進してきた典型的な成り上がり者が人生の最期の日々に回想するであろうことも強調した。

「その頃には肉体は苦労と病気で衰弱し、精神はと言えば、敵の不正行為や友人の背信忘恩のせいだと信じ込んできた無数の災厄と失望の記憶でずたずたに傷ついている。人生も終わりに近づいたこのときになって、富も権勢もほとんど役に立たないつまらぬものであり、肉体の安楽や精神の平穏を得るうえで、がらくた狂の連中が後生大事に持ち運ぶ箱以上の意味はないと気づき始めるのだ」(道徳感情論 第四部第二章)

 

「身体の安楽と心の平安に関しては、身分の上下を問わず誰もが似たり寄ったりであり、国王が戦って勝ち取ろうとしている安全の保障を、街道の脇でひなたぼっこしている乞食あすでに所有している」(道徳感情論 第四部第二章)