テロルの決算(沢木耕太郎)

17歳の山口二矢による社会党委員長浅沼稲次郎へのテロはいくつもの偶然が重なって成功してしまったものだった。

 

・浅沼が登壇する演説会の告知は山口家が購読している新聞にしか掲載されなかった。

 

・殺害の武器となる日本刀は山口二矢の父である山口晋平が護身用に保持していたものでテロ数日前に二矢に見つけられた。

 

・演説会会場に山口は開場時間をだいぶ過ぎてから現れた。開場時刻には公安警察が受付に立ち会っていたが、山口が来場した時間には引き上げていた。山口は暴力的な右翼として何度も逮捕されていたので開場時に来ていればマークされていた可能性がある。

 

・演説会の入場には入場券が必要だったが、山口は入場券を持っていなかった。山口が入場券を持っていないことを察知した関係者が入場券を渡したことで山口は入場できた。

 

・演説会は山口の他にも右翼党員が参加していて、浅沼の演説中に檀上にあがりビラをまくなど荒れていた。山口が浅沼に襲い掛かる前に、檀上でビラをまいた右翼党員を警察が確保していた。それにより檀上の警備が手薄になり、そのタイミングで山口が浅沼に襲い掛かったために警備が機能しなかった。